企業型の確定拠出年金制度導入に伴う運営管理機関の選定は、さまざまな運営管理機関からのアプローチがある中で結論を出す必要があるため、客観的な選定基準が必要です。
また、各運営管理機関の選定基準の優劣だけでなく、自社の実情に最もマッチする運営管理機関を選定することが望ましいため、事前に導入側(企業側)として認識しておくべきことがあります。
さらに、運営管理機関から提案されたすべての機能を網羅的に導入するのではなく、企業側として制度の運営方針や費用対効果を考慮することも必要です。
運営管理機関の関連業務は、幅広く、大手といわれる運営管理機関であっても1社ですべての業務を完結することはなく、記録管理やコールセンター業務等を他の運営管理機関等に再委託しています。
運営管理機関の選定は、元受の運営管理機関だけではなく、再委託先の記録関連運営管理機関等についても確認されることをお勧めします。
特に昨今の金融機関の合併により、複数の再委託先記録関連運営管理機関(以下「RK」という)を利用できる元受運営管理機関もありますので、それぞれのRKの業務運営方法が自社の実情に沿うものであることが重要です。
例えば、大手のRKである日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(略称JIS&T)、日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社(略称NRK)(以上設立順)では、それぞれのビジネスモデルが異なり、元受運営管理機関もRKごとに独自の業務運営方法やシステム対応を行っています。
また、確定拠出年金制度の設立形態には、自社が単独または連結子会社等関連会社と共同で設立する場合(「単独型」、「連合型」と総称されています)と、資本関係や業種等が異なる複数の企業が一つの年金規約のもとに設立する場合(「総合型」と総称されています)があります。
前者はどちらかというとオーダーメイド型で、後者はレディーメード型です。
総合型を取扱っていない運営管理機関もありますが、コストは割安である反面、提示される運用商品は限定されています。
ただ、前払い制度との選択制など、加入者数が比較的少ない場合やコスト面を優先される場合には、総合型による導入も選択肢の一つになります。
確定拠出年金制度実施後に運営管理機関を変更することもできますが、加入者や運用指図者の運用商品のキャッシュ化が必要になり、投資上の観点から望ましくない場合があり、また実務上も変更前の運営管理機関では加入の喪失、制度の停止手続きを行い、変更後の運営管理機関では制度登録と加入登録手続きを行うなど煩雑な手続きが必要になる場合がありますので、運営管理機関の選定は、慎重に行うべきです。
なお、運営管理機関の選定をコンサルティング会社に委託されるケースもあると思います。
コンサルティング会社は、候補となる運営管理機関に次回に紹介するいくつかの視点によるアンケート(質問状)等を依頼します。
コンサルティング会社は、運営管理機関の回答内容により、最終選考となるプレゼンに参加する運営管理機関の絞り込みを行います。
コンサルティング会社が、最終選考のプレゼンにも参加する場合もありますが、運営管理機関の選定のすべての業務を委託される場合は、コンサルティング会社の調査・調整力や提案力が必要になります。
運営管理機関に対する調査に基づき得られた情報および導入側企業の要望と実情調査により得られたあるべき姿から、どの運営管理機関(再委託先運営管理機関を含む)のどういう機能を利用することが、加入者の利便性と企業側の費用対効果に資するものとなるか、選定過程を含めて具体的に提案できるコンサルティング会社が望ましいと思います。
以上からコンサルティング会社の選定も重要になりますので、事前にコンサルティング会社が受託した過去の選定報告書等を確認されることをお勧めします。
報告内容に具体的な評価・推薦の記述がなく、「保守的に評価する」などの記述だけである場合は、信頼性が乏しいといえます。
次回は、「企業型運営管理機関選定の視点2回目」として「企業側の現状と将来像の認識」、「運営管理機関選定の5つの視点」を解説します。
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