前回は、見直し内容の解説をする前に「通算企業年金」の概要について解説しました。
「通算企業年金」とは、どういうものかお分かりいただけたと思いますので、今回は見直しの内容を解説します。
見直し(予定)の趣旨は、ゼロ金利解除や企業年金連合会の年金経理の黒字化により、「通算企業年金」をさらに魅力的なものにするため、予定利率などの見直しを行うものです。
具体的には、以下のとおりです。
(1)予定利率の見直し
長期国債の応募者利回りの動向を勘案して当面2.25%(現行は0.5%)とする。
見直し後の予定利率は、平成18年10月から施行するが、平成17年10月に遡及適用して年金額を増額改定する。
今後、予定利率の見直しがあっても今回限りとして遡及せず、年金増額率によって調整する。
なお、資格喪失時点の予定利率は、終身適用される。
(2)事務費の見直し
当面現行どおりとするが、基本年金事務費の検討状況を踏まえて見直す。
(3)運用方法
基本年金、代行年金と合同で運用し、経理を区分して収益を経理ごとの元本平均残高で按分する。
(4)年金増額率
運用状況を勘案して年金額を増額する場合は、剰余から危険準備金等を控除して、予定利率が低い者の方に年金増額率が高くなるよう算定する。
なお、予定利率の大幅引上げにより、5年ごとの年金増額の配当ができなくなる可能性が高くなる。
以上が見直しの概要ですが、ゼロ金利解除後、初めての受益者に対する還元です。
今後の長期国債の応募者利回りの動向も注視していく必要がありますが、退職金制度等から確定拠出年金に移行した際の想定利回りが、2%から2.5%程度であることを考えると安定的な運用手段になるものと思います。
また、一部の企業でようやく転職者の脱退一時金相当額を確定給付企業年金で受け入れる動きが見られますが、実務面やシステム面、さらに後発債務の発生等に対する対応が必要であるため、現状では包括的な受入れが困難なケースが多く、今回の「通算企業年金」の見直しはポータビリティの拡充に向けても一石を投じたものとなります。
先に公表された「確定拠出年金サービス事業3ヵ年計画」といい、企業年金連合会の矢継ぎ早な動きです。
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