厚生年金基金連合会の業務は、当初は、厚生年金保険法に基づく厚生年金基金の連合体として設立された経緯があるため、厚生年金基金の中途脱退者に対する年金給付と保有資産の運用や解散基金の加入員に対する支払保証事業、小規模基金の共同事務処理事業、厚生年金基金役職員への研修事業、年金制度の調査・研究・情報提供事業、基金加入員に対する福祉事業などを実施していました。
その後、平成16年の法改正により、厚生年金基金連合会の役割が拡大され、平成17年10月から企業年金連合会として厚生年金基金の他、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金、適格退職年金という企業年金全体の短期脱退者の通算センター(通算企業年金制度の運営・管理や脱退一時金相当額等の移受換の業務など)としての位置づけとナショナルセンターとして会員企業(会費を納入した企業年金実施企業など)のための政策提言や研修などの業務も行うことになりました。
今回の「確定拠出年金サービス事業3ヵ年計画」(以下「事業計画」という)は、連合会のサービス機能を高めることによって新規会員の獲得を目指したものといえます。
事業計画のなかで確定拠出年金実施企業の会員が求める連合会のサービス像として、以下のものが挙げられています(要旨)。
1)人事・総務部で他業務を兼任するDC実務担当者の業務負荷の軽減と教育・研修機会の提供
2)運営管理機関のコミュニケーション不足を補う最新情報・知識の提供と導入企業間のコミュニケーション機会の提供
3)制度上の制限や事務手続き上の制限による障害を改正、改善する提言などの取り組み
これに対する連合会の事業メニュとして以下の4つを掲げています。
1)研修メニュー
2)個別相談体制
3)広報・出版体制
4)調査・提言体制
詳細は連合会のホームページをご覧いただくとして、いずれも運営管理機関が本来果たすべき役割だと思われ、現在激しい受託競争を繰り広げている運営管理機関や各金融機関は、確定拠出年金業界として共通の認識と理念のもとで確定拠出年金の健全な発展のために行動を起こす時期にきています。
すでに一部の有力な運営管理機関やメガバンクなどが具体的な検討をはじめているかもしれませんが、確定拠出年金業界を包括する組織を中心として確定拠出年金の健全な発展に努力していただきたいものです。
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今回の解説は、「現役世代が拠出する国民年金保険料が高齢者世代の年金をまかなう水準」についてです。
わが国の公的年金制度の特徴のひとつである世代間扶養(賦課方式)は、現役世代が拠出する保険料が高齢者世代の年金をまかなうことになるため、保険料や年金の水準が現役世代の賃金と人口構成(現役世代の高齢者世代に対する比率)に影響を受けるとされます。ここでは、現役世代が拠出する保険料が高齢者世代の年金をまかなうために今後の保険料水準がどのようになっていくか見てみましょう。
国民年金法の平成16年(2004年)改正(平成16年法律第104号)第87条第3項~第6項により、「保険料水準固定方式」が導入され、平成29年度まで毎年自動的に引き上げられ、平成29年度以降は一定額になります。
毎年度の保険料は、以下のとおりです。
・平成16年度は、月額13,300円
・平成17年度から28年度までは、前年度月額保険料に280円を加算
・平成29年度以降は、平成28年度の月額保険料に240円を加算
いずれの年度の月額保険料にも毎年度一定の改定率を乗じることになるため、厳密には一定額に固定されるわけではありません。
改定率は、毎年度、前年度の改定率に名目賃金変動率を乗じた率を基準として改定されます。
なお、平成17年度、18年度とも改定率は「1」であったため、平成18年度の月額保険料は13,860円です。
なお、厚生年金保険法も同様な改正により、平成16年10月から17年8月までの保険料率が1,000分の139.34、その後毎年1,000分の3.54ずつ上がり、平成29年9月以降は1,000分の183で固定されます。
標準報酬月額および標準賞与額に保険料率を乗じて保険料を算出するため国民年金のような改定率はありませんが、標準報酬月額最高等級(現行30等級)の上に、一定の要件によりさらに等級を加えることができ、それに伴い標準賞与額の上限も引き上げられますので、厳密には保険料額が一定額に固定されるわけではありません。
したがって、現役世代の「保険料水準固定方式」による保険料が、高齢者世代の「マクロ経済スライド」による年金をまかなうということになります。
ちなみに厚生年金・国民年金の平成16年財政再計算結果による報告書で、公的年金制度における給付と負担の倍率は、どの世代をみても、支払った保険料の、厚生年金では2.3倍、国民年金(基礎年金)では1.7倍以上の給付が受けられる結果になっていると報告されています。
重要な観点が漏れていましたので、次回の解説は、「賦課方式から積立方式への変更(農業者年金基金の事例から考察)上」に変更します。
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今回の解説は、「わが国の公的年金制度の特徴(物価スライド)」です。
わが国の公的年金制度の特徴のひとつである世代間扶養(賦課方式)は、現役世代が生み出す富の一定割合をそのときの高齢者全体に再配分するという仕組みにより、物価スライドによって実質価値を維持した年金を一生涯にわたって保障するという、安定的な老後の所得保障を可能にしているとされています。ここでは、物価スライドによる実質価値の維持について、現状はどのようになっているか見てみましょう。
国民年金法の平成16年(2004年)改正(平成16年法律第104号)第16条の2により、従来の年金の自動改定(総務省が作成した年平均の全国消費者物価指数の上昇または低下した比率を基準とした年金額の改定)が廃止され、完全な物価スライドとはいえなくなりました。
今後の取扱いは、以下のとおりです。
なお、厚生年金保険法も同様な改正がされていますが、詳細は別途解説しますので、ここでは国民年金の取扱いについて解説します。
(1)5年ごとに財政均衡期間(おおむね100年)における国民年金事業の財政の現況及び見通しを作成する。(法第4条の3)
(2)国民年金事業の財政が、財政均衡期間の終了時に給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金を保有しつつ、当該財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には、給付額(付加年金を除く)を調整するものとする。
給付額を調整する期間を「調整期間」といいます。(法第16条の2)
調整期間は、平成17年度から開始され、平成37年度に修了する見込です(平成16年財政再計算の見通しによる)。
(3)法第27条により、老齢基礎年金の額は、「780,900円(満額のとき)×改定率」になりました。
(4)法第27条の4、5により、改定率は、平成17年度から「マクロ経済スライド」という考え方により以下のように計算され、毎年変動します。
「マクロ経済スライド」は、保険料を負担する現役世代の人口の減少と高齢者世代の給付額の増加につながる平均余命の伸びを年金額に反映させ、給付水準を調整するものです。
調整により、年金額の伸びを、すでに年金を受給している方は物価の伸び率、新たに年金を受給する方は手取り賃金の伸び率よりもそれぞれ低く抑えることになります。
(5)老齢基礎年金の年金額は、平成12年度、13年度、14年度の物価下落率(合計1.7%)を政策的に反映せず、据え置かれ、平成15年度、16年度は規定どおり物価下落率(合計1.2%)を反映して794,500円に改定されています。
新しい国民年金の年金額780,900円(満額のとき)は、過去の物価下落率反映前の804,200円に過去の物価下落率(合計2.9%)を反映した額です。
平成16年10月以降の年金額は、この794,500円にその後の改定率を乗じて自動的に改定されることになっていますが、改定後の年金額が794,500円を超えるまでは現状維持され、物価が下落したときは、改正前の規定による下落率を乗じた額になります。
以上を「物価スライド特例措置」(平成16年法附則第7条)といい、平成12年度、13年度、14年度の物価下落率(合計1.7%)分が、相殺解消されるまで「マクロ経済スライド」は適用されません。
次回の解説は、「現役世代が拠出する国民年金保険料が高齢者世代の年金をまかなう水準」についてです。
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今回の解説は、「わが国の公的年金制度の特徴(世代間扶養)」です。
世代間扶養は、賦課方式とも呼ばれます。
現行の公的年金制度は、基本的には現役世代の保険料負担で高齢者世代を支えるという世代間扶養の考え方で運用されています。世代間扶養は、私的に行っていた「子から親への仕送り」を社会全体の仕組みに広げたものとされています。
また、現役世代が生み出す富の一定割合をそのときの高齢者全体に再配分するという仕組みにより、物価スライドによって実質価値を維持した年金を一生涯にわたって保障するという、安定的な老後の所得保障を可能にしているとされています。
なお、そのとき必要な給付を、そのとき徴収する保険料でまかなうという「賦課方式」に対比される「積立方式」は、将来必要な年金給付の原資を事前に積み立てる方法です。
「積立方式」は、企業年金制度で採用されていますが、積立金を保有することによって生み出される運用収益により、長期的には「賦課方式」に比べて保険料負担が少なくなる効果が期待できるとされます。
逆に期待運用収益率を下回った場合は、不足額が多額になるリスクがあり、公的年金制度で多額の資産を保有することは、運用面で大きなリスクを抱えることになるとされます。
一方、「賦課方式」は、現役世代が拠出する保険料が高齢者世代の年金をまかなうことになるため、保険料や年金の水準が現役世代の賃金と人口構成(現役世代の高齢者世代に対する比率)に影響を受けるとされます。
逆に年金の原資が現役世代の賃金に基づいているため、賃金上昇に比例して保険料水準が引き上げられ、その効果として年金水準の引き上げとなってインフレリスクに対応できるとされます。
次回の解説は、「わが国の公的年金制度の特徴(物価スライド)」です。
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現行の制度でも基礎年金給付に必要な財源の3分の1は国庫負担になっていますが、平成16年(2004年)6月改正により、平成21年度(2009年度)までに2分の1に引き上げることは決まっているものの財源確保などが具体的には決まっていません。
このような状況の中で、過去の国庫負担に関する議論の経緯がどのようなものであったか、見てみましょう。
昭和60年(1985年)改正(昭和61年4月1日施行)で全国民共通の基礎年金が創設されて以来、国庫負担は3分の1となっています。
平成16年(2004年)改正で2分の1に引き上げることになるまで、以下のような経緯がありました。
(1)平成6年(1994年)改正法(平成6年法律第95号)附則第2条(現在は削除)
平成7年以降において初めて行われる財政再計算の時期を目途として、年金事業の財政の将来の見通し、国民負担の推移、基礎年金の給付水準、費用負担の在り方等を勘案し、財源を確保しつつ、基礎年金の国庫負担の割合を引き上げることについて総合的に検討を加え、その結果に基づいて、必要な措置を講じるものとする。
(2)平成12年(2000年)改正(平成12年法律第18号)附則第2条
基礎年金については、給付水準及び財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成16年度までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の2分の1への引上げを図るものとする。
(3)平成13年(2001年)6月26日閣議決定
平成12年(2000年)改正法附則第2条をどのように具体化していくかについて、安定した財源確保の具体的方策と一体的に鋭意検討する。
(4)平成16年(2004年)改正(平成16年法律第104号)第85条(国庫負担)、法附則第13条(基礎年金の国庫負担に関する経過措置)、第15条(基礎年金の国庫負担割合の引上げ)、第16条
1) 基礎年金に対する国庫負担の割合を2分の1に引き上げることにされましたが、別に法律で定める年度(「特定年度」という)の前年度まで国庫負担は次のとおりです。
〔平成16年度〕3分の1+一定額
〔平成17年度から特定年度の前年度まで〕3分の1+1,000分の11
2) 平成17年度及び平成18年度において、我が国の経済社会の動向を踏まえつつ、所要の税制上の措置を講じた上で、別に法律で定めるところにより、国庫負担の割合を適切な水準へ引き上げるものとする。(法附則第14条)
3)特定年度については、平成19年度を目途に、政府の経済財政運営の方針との整合性を確保しつつ、社会保障に関する制度全般の改革の動向その他の事情を勘案し、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、平成21年度までの間のいずれかの年度を定めるものとする。(法附則第15条)
以上のように財源確保については、10年以上にわたって議論を重ねてきていますが、まだまだ道半ば、今後も小泉後継問題や参議院選挙も控えている現状で、どこまで税制の抜本的な改革ができるか、法律で決めたことはきっちりと(いつの間にか条文が削除されることがないよう)やり遂げなければ国民に示しがつかないと思います。
次回の解説は、「わが国の公的年金制度の特徴(世代間扶養)」です。
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わが国の現在の公的年金制度は、国民皆年金、社会保険方式、世代間扶養、という3つの特徴をもっています。
今回は、社会保険方式について、解説します。
わが国の公的年金制度は、加入者が保険料を負担し、保険料拠出実績(保険料額と拠出した期間)に応じて給付を支給するという社会保険方式になっています。
社会保険方式では、保険料を納めないと将来の給付はもらえませんが、給付と負担の関係が明確であることから、国民の理解を得やすいとされます。
社会保険である公的年金制度は、強制加入とすることにより若い頃から老後に備えるという個人の視点でみた必要性と現役世代の国民が全員参加で公的年金を支えることを義務づけることによって安定した所得補償を構築するという制度全体の視点から見た必要性があるとされます。
また、公的年金制度は、現役時代の収入の低い人にも一定以上の年金を保障する仕組みとなっており、所得再配分を伴うものになっているとされます。
なお、社会保険方式に対比される「税方式」導入の論議があります。
「税方式」は、給付の財源を加入者からの保険料の負担によらず、税金により手当てするものです。
現在問題になっている国民年金の未加入や保険料の未納・滞納という事態が解消されることになりますが、公的年金制度の3つの特徴や役割に対する考え方が異なることになります。
現行の制度でも基礎年金給付に必要な財源の3分の1は国庫負担になっていますが、平成16年(2004年)6月改正により、平成21年度(2009年度)までに2分の1に引き上げることは決まっていますが、財源確保などが具体的には決まっていません。
次回の解説は、「国庫負担割合引上げの財源確保に係る議論の経緯」です。
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わが国の現在の公的年金制度は、国民皆年金、社会保険方式、世代間扶養、という3つの特徴をもっています。
今回は、国民皆年金(強制加入)について、解説します。
わが国の公的年金制度は、自営業者、農林漁業従事者、会社員、専業主婦、無業者を含めて20歳以上60歳未満のすべての国民(外国人を含む日本国内に住んでいる人)が国民年金(基礎年金)に加入し、基礎年金給付を受けるという国民皆年金の仕組みになっています。
昭和36年(1961年)に発足した旧国民年金は、現在のようにすべての国民を対象としていなかったため、加入している制度により給付と負担の両面で不公平が生じていました。
このため、昭和60年(1985年)改正により全国民共通に給付される基礎年金を創設し、厚生年金等の被用者は、基礎年金に上乗せする2階部分として報酬比例年金を給付する制度に再編成されました。
国民皆年金とすることにより、安定的な保険集団が構成され、社会全体で「老後の所得保障」という問題に対応していくことができるとされます。
また、基礎年金は、老後の基礎的部分の保障をするため、全国民共通の給付を支給するものであるため、その費用についても被用者年金制度を含む各制度に属する加入者数に応じて負担する仕組みになっています。
次回の解説は、「わが国の公的年金制度の特徴(社会保険方式)」です。
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前回解説(←ココをクリック)したように多くの公的年金制度が整備されてきた中で、零細企業等の被用者、農林漁業従事者、商工業等の自営業者などは、公的年金制度から取り残されたままになっていました。
昭和23年に設置された社会保障制度審議会(平成13年1月6日廃止)は、このような現状から昭和25年10月に「社会保障制度に関する勧告」、昭和28年12月に「年金制度の整備改革に関する勧告」により、社会保障制度から取り残された多くの国民に対する生活の最低限度を社会的に保障する老齢年金制度の創設を提起しましたが、恩給制度や厚生年金保険の改正等が優先されました。
ようやく昭和32年5月岸首相の諮問により、昭和33年(1958年)6月14日に社会保障制度審議会から「国民年金制度に関する基本方策について」が答申され、厚生省案の発表と大蔵省の意見を経て、昭和34年(1959年)4月16日国民年金法が公布され、昭和36年4月1日から拠出型国民年金の実施により国民皆年金が実現(昭和34年11月1日からは無拠出型年金(福祉年金)を実施)しました。
しかし、国民年金制度が創設され、全国民がいずれかの公的年金制度の適用を受けることになったものの、今まで船員保険、厚生年金保険、各種共済組合など多くの公的年金制度がほとんど相互に関連もなく創設、実施されてきたため、いずれかの制度で老齢年金または退職年金の支給要件を満たさずに退職し、他の制度に変わった者については、いずれの制度からも所得保証が行われないという欠陥がありました。
このため、各公的年金制度における本来の老齢年金または退職年金の受給資格期間を満たしていない場合でも、各制度の被保険者期間または組合員期間を通算調整して通算老齢年金または通算退職年金を支給することができる「通算年金通則法」が昭和36年(1961年)11月1日に制定されました(昭和36年4月1日適用、昭和60年5月1日廃止)。
ただし、通算の対象となる期間(「通算対象期間」という)が、原則として1年以上に限定され、障害、遺族給付については通算の対象となりませんでした。
その後、数次の給付水準の改善があり、昭和48年(1973年)には物価スライド制・賃金再評価が導入され、昭和60年(1985年)5月1日に国民年金法の改正により全国民共通の基礎年金制度が創設(昭和61年4月1日施行)されました。
また、昭和61年4月1日に船員保険の職務外年金部門が厚生年金にはじめて統合され、その後、平成9年には旧公共企業体職員等共済組合(NTT、JR、JT)、平成14年には農林漁業団体職員共済組合のそれぞれの長期給付事業が厚生年金に統合されました。
今後は、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済組合の長期給付事業が厚生年金に順次統合され、将来的には全国民共通の国民年金と被用者共通の厚生年金の2本建てに集約されることになります。
次回の解説は、「わが国の公的年金制度の特徴(国民皆年金)」です。
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我が国の公的年金制度は、明治8年(1875年)4月の陸軍恩給制度の創設からはじまります。
世界史上の公的年金制度は、古代ローマ時代に遡るといわれますが、当時の年金制度は国家、国益の追求と国威発揚の先兵となる軍人のモチベーション高揚、さらに戦費調達を目的としていたようです。
我が国の公的年金制度も軍人を対象とした恩給制度からはじまりましたが、明治17年(1884年)1月に文官の恩給制度が発足し、大正12年(1923年)4月には各種恩給制度を整理統合した現行の「恩給法」(同年10月施行)が制定されました。
第2次世界大戦の敗戦後、連合国最高司令官の指示により、昭和21年(1946年)2月に重症者に係る傷病恩給を除き、旧軍人・軍属の恩給が廃止されましたが、昭和28年(1953年)8月に廃止前の制度に一部制約を加えた旧軍人・軍属の恩給が復活しました。
また昭和33年(1958年)5月には「国家公務員共済組合法」(昭和34年1月施行)、昭和37年(1962年)9月には「地方公務員等共済組合法」(同年12月施行)がそれぞれ制定され、国家公務員と地方公務員の年金制度は恩給から共済年金に移行されました。
一方、民間の被用者に対する公的年金制度は、昭和14年(1939年)4月に「船員保険法」(昭和15年6月施行)が制定され、船員(海上労働者)に対するものがその最初となりました。
また、昭和16年(1941年)3月には「労働者年金保険法」(昭和17年6月施行)が制定され、一般の労働者としてはじめて工場等の男子労働者が対象とされました。
昭和19年10月に労働者年金保険法を「厚生年金保険法」に改訂し、男子事務職員や女子も対象となりました。
ただ、民間被用者の年金制度の拡充は、労働者の福祉の充実というより、当時の戦時体制化における労働力の保全・強化と生産力の拡充ならびに戦費調達の側面が強かった(年金財政方式は、平準保険料方式・積立方式)とされます。
昭和29年(1954年)5月には、戦後の急激な社会経済情勢の変動とインフレの終息により、従来の厚生年金保険法を新たな理念のもとに全面改正し、社会保障の立場から給付の内容を整備拡充(従来の報酬比例方式から「定額年金+報酬比例部分」に転換)するとともに将来にわたる財政的基盤の確立(保険料率の将来見通し作成、財政再計算実施、年金財政方式は段階保険料方式・修正積立方式を採用)を目指しました。
このような歴史的な沿革の中で恩給、各種共済組合年金、船員保険、厚生年金保険など、多くの公的年金制度が整備されてきましたが、零細企業等の被用者、農林漁業従事者、商工業等の自営業者などは、公的年金制度から取り残されたままになっていました。
次回の解説は、「わが国の公的年金制度の沿革(国民年金創設から現在まで)」です。
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確定拠出年金法の目的は、個人または事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、必要な事項を定めるとされています。
自己の責任において高齢期に満足できる結果を得るためには、単に確定拠出年金のことだけではなく、確定拠出年金と同様に高齢期に給付を受けることになる公的年金制度やその他の年金制度全般の内容を理解したうえで、適切な資産運用知識に基づいた運用指図を行う必要があります。
このため、確定拠出年金制度や金融商品の内容、資産運用に係る知識を理解する前提として、公的年金制度やその他の年金制度全般について理解を深めることが重要です。
特に公的年金制度は、今後もさまざまな制度改革が必要になってきますが、一部の有識者に将来の年金制度のあり方を委ねてしまうのではなく、最も身近な年金制度である公的年金制度の加入者として、または受給者としてあらゆる機会を捉えて積極的に関わっていただきたいと思います。
わが国の年金制度は、3階建てで構成されています。
1階部分は、すべての国民に共通した「国民年金(基礎年金)」です。
2階部分は、民間の会社員、公務員、私立学校等の教職員などの「被用者年金(厚生年金、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済)」です。
3階部分は、企業などが任意に実施する「企業年金制度(厚生年金基金、適格退職年金、確定給付企業年金、確定拠出年金)」、中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度や公務員の共済年金に上乗せされている「職域加算」などがあります。
1階部分、2階部分の各年金制度は、「公的年金制度」と総称されます。
自営業者、農林漁業従事者などは、「国民年金(基礎年金)」のみに加入しますが、国民年金の上乗せ年金制度として任意に加入できる国民年金基金、確定拠出年金(個人型)や農業従事者には農業者年金基金があります。
さらに、公的年金制度や企業年金制度等の上乗せ年金として、個人が任意で加入する財形年金や民間の個人年金もあります。
これらの年金制度は、その創設の経緯や制度ごとの加入対象者、加入方法(強制加入、任意加入)、国庫負担や税制優遇措置など、さまざまな違いがあります。
少し時間が必要かもしれませんが、ご自分が加入している、または加入することができる年金制度をこの機会に勉強してみてはいかがでしょうか。
次回の解説は、「わが国の公的年金制度の沿革(国民年金創設前の沿革)」です。
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第2 資産の運用に関する情報提供(いわゆる投資教育)に関する事項
1.略
2.加入時及び加入後の投資教育の計画的な実施について
(1) 加入時には、実際に運用の指図を経験していないことから、確定拠出年金制度における運用の指図の意味を理解すること、具体的な資産の配分が自らできること及び運用による収益状況の把握ができることを主たる目的として、そのために必要な基礎的な事項を中心に教育を行うことが効果的である。事業主等は過大な内容や時間を設定し、形式的な伝達に陥ることのないよう、加入者等の知識水準や学習意欲等を勘案し、内容、時間、提供方法等について十分配慮し、効果的な実施に努めること。
(2) 加入後の投資教育は、加入時に基本的な事項が習得できていない者に対する再教育の機会として、また、制度に対する関心が薄い者に対する関心の喚起のためにも極めて重要である。
加入者が実際に運用の指図を経験していることから、加入前の段階では理解が難しい金融商品の特徴や運用等についても運用の実績データ等を活用し、より実践的、効果的な知識の習得が期待される。
(3) 加入時及び加入後の投資教育については、それぞれ、上記のような目的、重要性を有するものであり、その性格の相違に留意し、実施にあたっての目的を明確にし、加入後の教育を含めた計画的な実施に努めること。
3.法22条(事業主の責務)の規定に基づき加入者等に提供すべき具体的な投資教育の内容
(1) 投資教育を行う事業主等は、2.で述べたように、加入時及び加入後の投資教育の目的、性格等に応じて、(3)に掲げる事項について、加入時、加入後を通じた全般の計画の中で、加入者等が的確かつ効果的に習得できるよう、その内容の配分に配慮する必要がある。
また、事後に、アンケート調査、運用の指図の変更回数等により、目的に応じた効果の達成状況を把握することが望ましい。
(2) 特に、加入後の投資教育においては、次のような事項について配慮すること
① 運用商品に対する資産の配分、運用指図の変更回数等の運用の実態、コールセンター等に寄せられた質問等の分析やアンケート調査により、対象となる加入者等のニーズを十分把握し、対象者のニーズに応じた内容となるよう、配慮する必要がある。
なお、運営管理機関は制度の運用の実態等を定期的に把握・分析し、事業主に情報提供するとともに、必要な場合には投資教育に関する助言をするよう努めること。
② 基本的な事項が習得できていない者に対しては、制度に対する関心を喚起するよう十分配慮しながら、基本的な事項の再教育を実施すること。
また、加入者等の知識及び経験等の差が拡大していることから、より高い知識及び経験を有する者にも対応できるメニューに配慮することが望ましい。
③ 具体的な資産配分の事例、金融商品ごとの運用実績等の具体的なデータを活用すること等により、運用の実際が実践的に習得できるよう配慮することが効果的である。
(3) 具体的な内容
① 確定拠出年金制度等の具体的な内容
ア わが国の年金制度の概要、改正等の動向及び年金制度における確定拠出年金の位置づけ
イ 確定拠出年金制度の概要(次の(ア)から(キ)までに掲げる事項)
(ア) 制度に加入できる者とその拠出限度額
(イ) 運用商品(法第23条第1項に規定する運用の方法をいう。以下同じ。)の範囲、加入者等への運用商品の提示の方法及び運用商品の預替え機会の内容
(ウ) 給付の種類、受給要件、給付の開始時期及び給付(年金又は一時金別)の受取方法
(エ) 加入者等が転職又は離職した場合における資産の移換の方法
(オ) 拠出、運用及び給付の各段階における税制措置の内容
(カ) 事業主、国民年金基金連合会、運営管理機関及び資産管理機関の役割
(キ) 事業主、国民年金基金連合会、運営管理機関及び資産管理機関の行為準則(責務及び禁止行為)の内容
② 金融商品の仕組みと特徴
預貯金、信託商品、投資信託、債券、株式、保険商品等それぞれの金融商品についての次の事項
ア その性格又は特徴
イ その種類
ウ 期待できるリターン
エ 考えられるリスク
オ 投資信託、債券、株式等の有価証券や変額保険等については、価格に影響を与える要因等
③ 資産の運用の基礎知識
ア 資産の運用を行うに当たっての留意点(すなわち金融商品の仕組みや特徴を十分認識した上で運用する必要があること)
イ リスクの種類と内容(金利リスク、為替リスク、信用リスク、価格変動リスク、インフレリスク等)
ウ リスクとリターンの関係
エ 長期運用の考え方とその効果
オ 分散投資の考え方とその効果
(4) 加入者等に、運用プランモデル(老後までの期間や老後の目標資産額に応じて、どのような金融商品にどの程度の比率で資金を配分するかを例示したモデル)を示す場合にあっては、元本確保型の運用方法(令第16条各号に既定する運用の方法をいう。以下同じ。)のみで運用する方法による運用プランモデルを必ず含んでいるものとすること。
上記(3)の具体的な内容について、加入時の基礎的な内容は、各運営管理機関等がそれぞれ工夫を凝らしたツールを用意されていますが、今後は加入後のモニタリングを踏まえた継続的な投資教育が必要になってきます。
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退職給付制度間の移行等に関する会計処理については、企業会計基準委員会から企業会計基準適用指針第1号 「退職給付制度間の移行等に関する会計処理(平成14年1月31日)」(以下「適用指針」という)と実務対応報告第2号「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い(平成14年3月29日)」で公表されています。
これらの指針等が公表されるまでの会計基準等は、従来の退職給付制度が維持、継続されることを前提としていました。
しかし、その後の確定拠出年金法(平成13年10月1日施行)、確定給付企業年金法(平成14年4月1日施行)の施行に伴い、退職給付制度間の移行等が可能となり、これらに関係する会計処理も明確にする必要が生じました。
特に退職給付制度間の移行等により退職給付債務の「減少」時の取扱いや未認識項目(会計基準変更時差異、過去勤務債務、数理計算上の差異)の遅延認識の取扱いを明確にする必要が生じました。
適用指針は、退職給付会計基準が前提とする確定給付型の退職給付制度(注)について、退職給付制度間の移行等により退職給付債務が増加または減少した場合に適用されるとしています。
(注)「確定給付型の退職給付制度」とは
厚生年金基金制度、適格退職年金制度、確定給付企業年金制度(規約型、基金型)と退職一時金制度があり、今後の解説では退職一時金制度を除いて「退職給付年金制度」といいます。
次回は、「退職給付制度間の移行等に関する会計処理2回目(退職給付債務が増加または減少する場合とは)」について解説をします。
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